2021年11月1日忘れられないもの
家のリフォームの際に、押し入れから始まり、実に多くのものを処分した。片付けもほぼ終わり近くなり、いよいよ本棚に手を付けることになった。
仕事に関わる本は、真っ先に、片付けの対象になった。まだ手元に置きたい本には、あれこれ理由をつけ、例えば、(孫が来た時に、一緒に折り紙で遊びたいなぁ。ちょっと専門すぎるかなぁ。そんな日が来ると良いなぁ)といった具合に、自分を納得させた。
限られたスペースの中であっても、今までは、山積みを当たり前にしていた。家人曰く、「自分のものは、自分が元気なうちに、ずっと使っていない物は片づけるのが、当たり前!」
他人から見れば、何でもないものであっても、本人には捨てがたいものもある。目には見えないけど、記憶の片隅にしっかりと根付いたものが。
一冊ずつあるいは、手に持てるだけ取り、思い切って処分する本は、紙袋に詰めていった。どうしても、この本は残そうという本に限り、本棚に戻した。
新聞記事に、石垣 りんさんが亡くなって17年のこの夏、久々に詩集が出されたことが載っていた。
どうしても残したかった本の中の1冊:日本女流詩集「翼あるうた」
この本の中の「石垣 りん・・・表札」生協の書籍コーナーで見つけ、その場で、一通り目を通し、やはり、手元に置きたいと思い、購入した。
自分の住むところには
自分で表札を出すに限る。
この2行から始まる詩に、その当時の自分の思いが重なり、繰り返し、心の中で、声に出して読んだ。自立して生きていくこと。女性に、適齢期という言葉があった時代。フォークソングが流行り、高度成長真っ只中。
まずは、働きたい。男性と対等の立場で働き、給料を手にしたい。
何よりも、自分らしく生きたい。未熟だったかもしれないが、理想を求めていた若かったあの頃。精神面で、この詩と出会えたことが支えとなった。
自分が決めたことには、責任を持つ。仕事をしていれば、充実感で満ちている時もあれば、思うようにいかず、気持ちが落ち込むときもある。
自分で選んだ仕事。(笑顔も給料のうち。)そう思って、気持ちを切り換えると、ピーンと張りつめていた気持ちが、一気に緩み、楽になった。熱い思いばかりでは、仕事がうまくいかない。時には、ガス抜きをし、自分らしさを維持し、鍛えていく。 同じゼミの仲間のギターに合わせて、「この広い野原いっぱい咲く花を・・・」と皆で歌った。詩と同時に輝いていたあの頃の仲間の顔が浮かんでくる。(C・S)